戦略原潜と水深の話(備忘録)

戦略原潜というのが、実際どう機能しているのかよくイメージできなかったのだが、最近おもしろい話を読んで色々調べると、結構興味深いのでまとめ。

 

核兵器搭載の戦略原潜の役割は、残存核戦力としてだ。そのため、戦略原潜は回遊し姿を潜ませている。しかし、この“潜む”に適した海域と言うと、条件があり何でも良いというわけでない。

一点目は、その海域をコントロールする事であり、それは敵の海空戦力を排除できる状態。

二点目は、“潜む=どこにいるか分からない”なので、それなりに大きく深い海域でなければならない。

 

これを米露の戦略で当てはめると、米国西海岸沖とバレンツ海(平均水深229m)、オホーツク海(平均水深838 m)のようだ。特にオホーツク海に関していえば、核抑止のための戦略原潜戦略において重要な海域であり、その制圧が千島列島・北方四島によって内海化されて容易になっていると考えれば、北方領土の重要性が浮かび上がると言える。

 

この二点から中国周辺の海域を見ると、黄海は平均水深44mで浅すぎるし、東シナ海南シナ海(フィリピン側)まで出なければ十分でない。

東シナ海(平均水深349m)における海域制圧のための拠点として尖閣諸島は重要なのだろうし、その周辺海域の制圧のためには、おそらく南シナ海の例にならい航空兵力の拠点として活用しようとするだろう。

南シナ海(平均水深1140 m)に関しては、大陸と東部のフィリピン等諸島に囲まれた内海であり、その制圧は東シナ海のような遠く南西諸島まで開かれた海域よりも容易であろう。そして、それが海南島が原潜基地である理由なのだろう。

個人的な印象では、東シナ海では日米同盟が機能するほか、南シナ海でも沿岸国は小国でもないし、国数も多く複雑なので、依然内海化するのは難しいのでないかと感じる。特に、米海軍の空母がベトナムに寄港するような状態は、この内海化の妨害に一役買っているだろう。

戦略原潜と核抑止については、「原潜 水深」で調べると結構出てくる。普段見えない海を立体的に捉えて原潜と核抑止を夢想するのは、なかなか面白い。最近、小川和久氏のメルマガを購読しているのだが、こまめな配信で軍事的知識が深まるので良い。月額1000円

 

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海底地形図(某所から失敬) 

 

注:随時訂正・加筆予定